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決勝戦レポートfinal

苦労人が報われる

 「やっと…。やっとですよ」
 ついにG3初優勝をつかんだ飯野祐太が、その味を噛みしめるようにこう言った。
 前受けした北日本勢に対して、北井佑季が突っ張りを警戒して青板バックで勢いよくカマしに行く。これに南関3番手の近藤隆司が離れて、根本哲吏は口が空いた3番手にハマる。最終ホームで前に追いついた根本が野口裕史の内に差し込むと、飯野は2コーナーから自らまくりを打って出た。
 「前を取って突っ張る想定でした。出られた時に外をさばくのは自分の仕事だと思って、野口さんか、近藤君を飛ばして根本を迎え入れようと。ジャン過ぎでスピードが落ちてきてたから、伊藤(旭)君に来られたらヤバいと思ったけど、根本が頑張ってくれた。根本が内に行ったので、自分は外しかないなと思って踏ませてもらいました。人の後ろだったので余裕はありました。初日に2周半行ったのも大きかった」
 05年のデビューから月日は流れて17年。これまでずっと、北日本を文字通り引っ張ってきた。幾度となくラインに勝利をもたらしてきた飯野自身が、ついに、ついに男になった。
 「もうG3は獲れないと思っていた。20代のころは優勝する気がなかったっていうか、後ろの人に優勝してもらいたかった。35歳を過ぎたくらいかな。自分も獲ってみたいって思うようになった」
次のステップはもちろんビッグレース。G1で勝ち負けできるかが、最大の目標だ。
 「最近はレースで力を出し切れているし、落ち着いて走れている。G3を優勝できたけど、G1じゃまだまだ。番手もしっかりこなせるようになりたい。今の競輪はタテ脚がないとヨコもできない。タテ脚を付けていきます」
 やっと一つ、これまでやってきたことが報われた。もっともっとどん欲になっても、良い頃合いだろう。飯野はもう、発進役では終わらない。

 北日本3番手の竹内智彦は、最終3コーナーで伊藤にインをすくわれて飯野と連結を外してしまう。伊藤後位に入り直して4コーナーから外を踏み、2着は確保した。
 「伊藤君がいなければ優勝できたかも。スピードが凄かったし、内に伊藤君がいてそれを見ながらで。自分で踏まなくちゃいけなくなったけど、意外と伸びた。途中まではおいしい展開と思ったんですけどね」

 番手まくりに出た野口裕史だが、飯野に上を行かれて3着が精一杯だった。
 「出切るときに北井君がかなり上の方を走ってくれて。根本君も良いダッシュだったので出切った時に近藤君がいないのは確認していた。出切って2車で車間が空いていて落ち着いてと思ったが、内を空けてしまって技術不足でした。内に根本君が見えて飯野君がまくってきたのがわかって慌てて踏んだ。人の後ろで脚を溜めることと、踏み上げることに慣れていなくてタテへ踏んだときは脚がパンパンで。キツかったけど、勉強になりました。色んな人が番手から踏めるのがすごいなと改めて思った」

レースプレイバック

 号砲が鳴ると最内枠の飯野祐太が誘導員の後ろを占め、根本哲吏-飯野-竹内智彦-泉慶輔の北日本勢が前を固める。中団は伊藤旭-大塚健一郎の九州勢、北井佑季-野口裕史-近藤隆司の南関勢は後攻めとなった。
 青板で北井率いる南関勢が上昇を始めると、根本はペースを落とし、誘導員と車間を大きく空けて北井をけん制。バックでは根本と北井で激しい踏み合いとなるも、出脚でまさる北井が前に出た。だが、南関3番手の近藤は続けず、赤板は北井-野口、根本-飯野-竹内-泉、伊藤-大塚、近藤で通過。ハイペースで飛ばす北井に対し、根本は仕掛けられず、ジャン、最終ホームも態勢は変わらない。野口は1センターで外帯線を外して自力に転じる準備をして、仕掛けられない根本は野口の内に潜り込む。2コーナーから野口が自力に転じると、根本に見切りをつけた飯野が踏み込み野口を追う。1コーナーから内に進路を取っていた伊藤が竹内を捌いて続き、竹内はその後ろで立て直しを図る。3コーナーから野口に襲い掛かった飯野は、直線半ばで野口を交わしてG3初Vを達成。伊藤は伸びを欠き、竹内が2着に突っ込んだ。野口は3着。