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ライちゃん

レース展望a prospect

 富山競輪場を舞台に平成28年熊本地震被災地支援競輪「第32回共同通信社杯(GⅡ)」が、9月16日に4日間シリーズの幕を開ける。06年以来、10年ぶりのビッグ開催。スター選手が“ドリームスタジアムとやま”を熱くする。

 中心は、地元地区の中部を支える浅井康太。グランプリのチャンピオンジャージをまとった今年は重圧との戦いでもあるが、すでにGレースを6Vとファンの期待に応えている。今期に入り福井記念を皮切りにサマーナイトフェスティバル、弥彦記念と3場所連続で優勝。福井、サマーナイトフェスティバルでは番手で俊敏な立ち回りを見せ、弥彦では先行策で逃げても強い浅井をアピールした。深谷知広、竹内雄作との連係なら番手の公算が大きいものの、吉田敏洋との並びはケースバイケースになりそうで目が離せない。その吉田敏洋は賞金ランク第5位(8月10日現在)。初のグランプリ出場へ一戦、一戦を全力投球。充実一途の吉田のビッグ初制覇も十分だろう。
 新田祐大は、今年13場所を消化して優出を外したのはわずかに一度。4つのGⅠではすべて決勝に進出し、6月の高松宮記念杯では3度目のタイトル奪取を果たしている。輪界で肩を並べる者がいない爆発的な瞬発力を武器に、北日本勢を引っ張る。新田と同じくSS班の山崎芳仁や渡邉一成、佐藤慎太郎の福島勢も、新田次第ではチャンスが大きく広がってくる。また、ビッグ初出場となる新山響平の走りにも熱い視線が注がれる。
 地区で最多のSS班3人を擁する関東勢も、戦力的に引けを取ることはない。平原康多、武田豊樹、神山雄一郎のSS班3人に木暮安由、諸橋愛。さらに吉田拓矢、鈴木竜士と若い力が育っている。7月小松島記念で遅まきながら今年初Vの平原は、後半戦へ上昇カーブを描いている。番手での立ち回りに磨きをかけ精度をあげている武田も、展開有利にレースを運べそうだ。
 村上義弘、稲垣裕之の京都勢を中心に、近畿勢は ”ライン“の競輪で別線に立ち向かう。2月全日本選抜の落車で負った怪我から順調に回復している稲垣の巻き返しは必至で、脇本雄太、三谷竜生らが加われば強力な布陣ができあがる。村上義弘にとって後輩たちの頑張りは心強いかぎりだろう。別線の動向を見極めて勝利を模索する。
 原田研太朗、岩津裕介の中四国勢。近況、伸びが目を引く園田匠や郡司浩平、渡邉晴智の南関勢にも注意したい。
 リオ五輪に出場の渡邉一成、中川誠一郎、脇本雄太の3選手が、五輪後に初めて顔をそろえる点でも今シリーズは見逃せない。全日本選抜、静岡ダービーでそれぞれ初戴冠を遂げた渡邉、中川。ビッグ初制覇へと闘志を燃やす脇本の3人が、競技で培ったパワーとスピードをファンに披露する。

注目選手pick up

  • 吉田 拓矢 【茨城・107期・S2】
     特進後のS級初場所の京王閣記念でタイヤ差の準V。ポテンシャルの高さで全国に名前を売った。今年に入っても快進撃を続け4月の当所FⅠでも、逃げ切り3連勝のV。
  • 新山 響平 【青森・107期・S2】
     卒記チャンプとしてデビューし、4月のルーキーチャンピオンは吉田拓矢ら強力茨城勢を抑えてV。7月函館では、記念優勝の最速記録を塗り替えた。無類の勝負強さ誇る。
  • 坂上 忠克 【石川・71期・S2】
     5月京王閣FⅠでは中割りで突き抜け、12年3月以来、久々の優勝を飾った。その後もコンスタントに白星を重ねている。道中から余裕が感じられ、差し脚も戻ってきた。
  • 北野 武史 【石川・78期・S1】
     8月弥彦記念は浅井康太を追い詰めたのものの、1輪差及ばずの準V。あわやのシーンを演出した。01年ふるさとダービー以来の地元のビッグ参戦で、ベテランが嗅覚を研ぎ澄ます。

出場選手インタビューinterview

  • 浅井 康太 【三重・90期・SS】
     今年は「結果が出なくて、つらい日々を過ごしてきた」と5月ダービーまでGⅠでの優出はなし。しかし、6月の宮杯で決勝3着で表彰台入りを果たすと、その動きは一転した。続く福井記念、サマーナイト、そして弥彦記念を制して3連覇。ムード最高潮で後半戦に臨む。
     「今年は結果を求めて走っていかないといけない。サマーナイトを勝ってホッとしたところもあるし、グランプリにむけて楽になったところもある。競走を走ることで強くなると思うし、1戦1戦しっかり集中して走ることが大事なので」
     さらに、弥彦記念ではぶっつけ本番で新車を投入。今後の戦いに向けても抜かりなく準備を整える。
     「自転車はまだまだ。(今後のビッグは)33バンクが続くのでしっかり33を走る体を作って、しっかり仕掛ける脚を作っていきたい」
     威厳を取り戻した王者が、短走路を縦横無尽に暴れまわる。
  • 平原 康多 【埼玉・87期・SS】
     昨年7月小松島記念を優勝した直後の練習中に落車し、右手首を骨折。「(その後は)思うような結果が残せなくて、自分自身が情けなかった」と振り返る平原だったが、今年7月の小松島記念で1年ぶりの優勝を飾った。その後もサマーナイトフェスティバルで決勝進出。後半戦に入り、本来の強さを取り戻している。
     「前半は成績がよくなかったけど、ようやく体がいい状態に戻ってきてる。思うところでしっかり仕掛けることができてるし、自信を持ってレースに臨めてる」
     体調が戻り、パフォーマンスを支えるツールの準備にも余念はない。弥彦記念では「33(バンク)用に」と昨年の大宮記念を制したときのフレームを使った。初日は車体故障、準決勝で失格と成績は散々だったが、吉田拓の番手を回った二次予選では「すごい楽」と好感触を得ていた。チャンスをつかめる状態には戻った。06年ふるさとダービーでビッグ初優勝を飾った舞台で再び平原が躍動する。
  • 新山 響平 【青森・107期・S2】
     “最強世代”とも評価が高い107期の中でも一歩抜け出しかけている。ルーキーチャンピオンを制し同期の頂点に立つと、7月函館では記念優勝の最速記録を塗り替えた。その新山がここ富山の地でビッグ初出走となる。
     「やることは変わらないんで、自分のできることをやるだけです。先輩達の前でしっかりと走れるように。富山は初めてですけど、ホームも33だし大丈夫だと思います。暑くなって練習量が減ってるので、いろいろな練習をやって備えたいです」
     先にビッグを走った吉田拓、鈴木竜の存在はやはり気になるようだ。その2人と初めてビッグの舞台で顔をそろえる。
     「同期の活躍は刺激になります。みんな強いですし当たれば勝負はしたいですね。みんな自力でラインでの勝負を」
     函館記念優勝後には「まだ、なんにも成し遂げてないんで、しっかりとタイトルを獲って頑張りたい」と強気なコメントも飛び出したが、新山なら実現も可能だ。ここ富山で歴史に新たなる1ページを刻む。
  • 吉田 拓矢 【茨城・107期・S2】
     107回生では一番乗りでS級に特進し、6月高松宮記念杯で早々とG1デビュー。吉田は同期の出世争いをつねにリードしてきた。しかし、7月弥彦記念の準決勝でデビューして初めての落車。続くオールスターを欠場した。
     「怪我は擦過傷と打撲。特に首が痛かったです。オールスターは直前まで出るか考えたけど、ちょっと厳しかったので」
     復帰戦となった8月小田原記念では連勝で準決勝に進出。「体を使って踏めなかったし、アタリはなかった」という初日レース後の言葉とは裏腹に力強い走りで怪我の不安を一掃した。
     戦いの舞台となる富山競輪場は今年4月に走ったばかり。「アタリがなくて、あまりいいイメージはない」と話すが、完全優勝しているのだから問題はないだろう。「(ここまでは)やれているほうだと思いますけど、もっと頑張りたい面もある」。今大会は新山響平、鈴木竜士と同期2名が参加。記念初優勝は新山に先を行かれたが、先にビッグ優出を決めるのは俺だ。
  • 鈴木 竜士 【茨城・107期・S2】
     新山響平、吉田拓矢に並ぶ107回生の若武者が、2度目のビッグレースに挑戦だ。8月静岡を準Vすると、次の立川を完全優勝と、ここにきて調子を上げている。
     「それまで結果は出てなかったけど、ずっと長いスパンをかけて練習をやっている最中なので、目先の結果は気にしていなかった。ちょっとずつだけど成果が出てきたのかも」 
     初ビッグ、サマーナイトでは1勝したものの、予選は吉田敏洋、金子貴志の愛知勢に完敗。力の差を痛感した。しかし、この経験をバネに、さらなるレベルアップを図る。
     「経験の差を感じましたね。初めてだったから仕方ないのかもしれないけど、上の人とは力の差だけじゃないものを感じた。これから焦らずに、その差を埋めていきます。次の共同はそういう意味では大事にしていきたい。デビューしてから333バンクは結構走っているし、苦手意識はない。全力を出し切りたいですね」
  • 北野 武史 【石川・78期・S1】
     地元で10年ぶりの特別開催。自身は2001年の「ふるさとダービー」以来、15年ぶりのビッグレースに挑む。
     「たしか、ふるさとは準決勝で中割りに失敗して4着。悔しい思いをしましたね。今回は自動番組だから地元の利はない。組み合わせに祈るしかないし、捨て身で突っ込んでいくしかないですね」
     8月弥彦記念は浅井康太に1輪差まで迫って準V。今回もあわやのシーンを演出するか。
     「あそこで差せなかったことで流れが悪くなったかも。オールスター、千葉はピリッとしなかったし。まあでも、調子は変わってないし、これから上積みしていく作業を繰り返していきます。今回は権利が取れなくて推薦での出場なので、気負わず楽しむくらいの気持ちで。まずは、自動番組の1次、2次予選をクリアすることですね。準決は中部総動員してもらって。そうすれば自分にもチャンスがあると思う」